こんにちは!
アーキラーニングの藤原です。
今日はですね、図面についてお話ししたいと思います。
図面の中でも「施工図」ですね。
今回は、施工図の描き方を教えるときに「まず何から教えるべきか」について述べていきます。
現場で実際に建物を造る上で、職人さんがじかに使う図面。
それが施工図なんですけれども、
これを社内教育や研修でお教えていくことがありますよね。
そのときに施工図の描き方を教えることがあると思うんですが、
まず何よりはじめに
施工図を作成する目的
を説明してあげることが大切です。
はじめて施工図に関わるのって、
新入社員の時もあるかもしれませんけども、
入社2年目、3年目になったぐらいですかね。
今はもう施工図ってCADで描きますよね。
ですので、
CADの操作方法を教えながら、
実際の現場の躯体図とかをトレースしてもらって
図面の書き込みを覚えてもらう、というような流れになると思うんですけども、
いきなりCAD画面の前で
「図面というのはこういう風に描くんだよ」
「まず通芯があって柱があって、寸法はどうでこうで…」
というような具体的な描き方を教えるのはおすすめしません。
それよりも前に施工図って何のためにあるの?
というところを説明していきましょう。
![](https://archi-learning.com/wp-content/uploads/2023/03/3321b12b4176172b394a117be973f3f5.jpg)
施工図って何のためにあるんでしょうか?
それは職人さんが工事をするためですよね。
では設計図があるのになぜ施工図が必要なの?というところについてはどうでしょうか?
それは
設計図には職人さんが工事をするのに必要な情報が載っていないので、
(または必要ではない情報が多すぎるので)
工事に必要な情報だけが載っている図面が必要だから
ですよね。
日が浅い方には分かりづらいかもしれません。
もう少し説明を足すとこんな感じですかね。
「こんな建物を造りたい」という施主の希望を設計者が表現したものが設計図
設計図を現実の建物にするために工事をまかされているのが現場監督
現場監督は職人さんに工事を割り振って設計図の建物を完成させる
そのために、我々は職人さんに工事を割り振って作業をしてもらわないといけないが、
設計図というのはゴール(建物の完成形)を表現している図面なので、
工事という途中経過(各工程や工種ごとのあれこれ)の図面はない。
つまり設計図では職人さんが工事できない。
そこで設計図から施工図を作る必要が出てくるんだ、ということですよね。
![](https://archi-learning.com/wp-content/uploads/2023/11/なるほど棒人間23599779-1-1-1024x713.jpg)
さて、設計図から施工図を作成するわけですが、
設計図を見ていきなり施工図、
例えば躯体図を描いていこうとか、平面詳細図を描いていこうとかっていうのは
現実にはできない、というか無理ですよね。
なぜかというと、
情報量が多すぎてそこから必要な情報を抜き取ることが
経験があっても難しいからです。
なので、施工図を描いていくときは、
いきなり図面を書き始めるのではなくて、
手順を踏んで描いていく必要があるということになります。
この手順を僕がどういう風に説明しているのかというと、
設計図を分解する → 分解したものを分析する → 分析したものを翻訳する
という「分解・分析・翻訳」の3つの手順で説明しています。
この3つの手順で
設計図の情報を職人さんが必要な情報に変換するということですね。
では順に説明していきます。
![](https://archi-learning.com/wp-content/uploads/2023/03/747ee6dd3e2fab21a1826bb1876ce569.jpg)
まず、分解ですね。
これは簡単に言うと同じ要素に分けるということです。
例えば部位なら「柱」とか、
もうちょっとざっくり設計図から「躯体」を取り出してから、
「柱」とか「梁」とか「壁」とか。
そういうふうな項目にまとめていく、というか分けていくということです。
この項目をどういう基準で分けるのかというのは色々あるんですが、
似たようなものとか同じ役割を持つものでまとめて、同じ要素として分けます。
ここまでが分解です。
![](https://archi-learning.com/wp-content/uploads/2023/03/6bd9df349f104666715e0d33e2d436ab-1024x1024.jpg)
その次は分析です。
それぞれの項目がどういう意味なのか、
例えば「なぜこの柱の寸法は900ではなくて1000なのか?」とか
一つ一つの要素について
「なぜこのような納まりになっているのか?」
ということを分析していくわけです。
そこに意味を見いだすというか、
なぜそうなっているのか理解する。
でないと「こういうふうに変えたい」とか
「職人さんに分かりやすく伝えたい」といった時に
どう変えたらよいか見当がつかないし、
職人さんにもうまく伝えられないですよね。
もうちょっと言うと、
設計者の意図を理解せずに勝手に変えたりとか、
アレンジしたりすることはできないということです。
何かとの関連性があって寸法なり形状なりが決まっているのに、
それを理解せずに自己判断で変えてしまうと、
後からどこかに影響が出て結局やり直しになっちゃう、ということです。
ですので
まずは一つ一つの項目が正しいのか正しくないのか、
そしてどうしてそうなるのかということを
自分なりに理解把握していくということです。
ここまでが分析です。
![](https://archi-learning.com/wp-content/uploads/2023/03/f0643444b043eb2a2a38bd33d478d424-1.jpg)
で、さいごは翻訳です。
これは分解・分析で整理した情報から
必要な情報だけをまとめるということですね。
例えば躯体図であれば、
それを使って工事をするのは大工さんや型枠大工さん、
鉄筋屋さんや電気設備屋さんっていうことになります。
なのでその躯体図の中に、
この部屋の天井高さは2500だとか、壁の仕上げはクロス貼りだとか、
そういう情報はいらないわけですよね。
逆にあるとややこしくなっちゃう。
大工さんや鉄筋屋さんが知りたいのは、
この柱のコンクリートの寸法はいくらなのかとか、
この梁の梁成はいくらでSL(スラブ)からどれくらい上がってるのか下がっているのかとか、
ここの壁の厚みはいくらなのかとか、そういうことです。
そして、それらが分かりやすく載っている図面が欲しいということなんですね。
使う職人さんが分かりやすいように
不要なものは書かずに、
より必要とされるものは付け加えてひとつの図面としてまとめ上げていく
これが翻訳です。
これで施工図は完成ということになります。
![](https://archi-learning.com/wp-content/uploads/2023/03/8822c31e32c864322bbfa89c4cfc01ee.jpg)
ここでは「分解・分析・翻訳」という言葉で説明してきましたが、
設計図の情報を職人さんが必要な情報に変換する
という目的が達成できれば、自分の教えやすい言葉で教えてあげればよいと思います。
施工図を教える時は
・施工図を作成する「目的」を教える
・施工図を描く「手順」(設計図の情報を施工図に載せるべき情報に変換する方法)を教える
ことが大事です。
設計図からいきなり施工図を描かせるのは
間違いのもとだし、
時間もかかるし、
必要な情報を落としてしまったり、
逆に不要な情報を載せてややこしい図面になってしまうもとです。
目的と手順をまずはしっかり教えていきましょう。
今回は
「施工図の教え方!いきなり図面を描かせてはいけない!まずは目的と手順を教えよう!」
という話でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
アーキラーニングは新人・若手現場監督を育成する事業を行っています。
次回も皆様のお役に立つ話をしたいと思います。
ご期待ください。ではまた!